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『縦並び社会』 [読書日記]

縦並び社会―貧富はこうして作られる

縦並び社会―貧富はこうして作られる

  • 作者: 毎日新聞社会部
  • 出版社/メーカー: 毎日新聞社
  • 発売日: 2006/09
  • メディア: 単行本

内容(「BOOK」データベースより)
「一億総中流」時代が終わり、格差が広がりつつある日本。人も会社も横並びが崩れ、「勝ち組」と「負け組」にはっきり分かれていく今、私たちが生きているのは「縦並び社会」ではないか―。取材班は、格差の現場を歩き、読者とともに紙面を作り、日本の目指すべき針路を探った。

以前、『10年後の日本』を読んだ時にも書いたことがあるのだが、新聞・雑誌系の連載特集を纏めた本というのは、各々のトピックの深掘りという点では物足りないところがあるが、論点が何がを確認するには包括的で非常にいいと思う。本書は毎日新聞の特集記事を中心に、読者の声や識者へのインタビューも盛り込まれ、わかりやすく纏められていると思う。
 
ただ、『縦並び社会』として独自性を出そうと苦心しているようだが、内容は「格差社会」と殆ど同義で使われており、少し前に読んだ『階級社会』が明らかに「階級」という言葉に込めた筆者のメッセージがあったのと比べると、なんでわざわざ「縦並び」と言う必要があったのか、僕はよくわからなかった。
 
本書を読んで改めて考えさせられたのは、規制緩和は規制を撤廃するだけではなく、別の適切な規制も求められるということだ。象徴的なのはタクシー業界の参入規制の撤廃で、規制撤廃されたことにより新規参入が増え、客の奪い合いになって料金ダンピング競争や労働強化が行われた結果、運転手1人当りの売上が激減した上勤務時間も長くなり、生活が立ち行かなくなったという話である。オリックスの宮内社長も竹中平蔵氏も誰でも参入できて再チャレンジできるようになったからいいじゃないかということを本書のインタビューの中でおっしゃっているが、生活が維持できない上に下手すると健康を害する可能性だってあるような仕事のやりかたでないと参入者と競争できないような市場主義はおかしいのではないかと思う。そうした記者の指摘に対して、宮内、竹中両氏はきちっと正面から反論をされておらず、のらりくらりとかわす答弁をしていて、読んでいて吐き気がした。
 
公共事業への民間参入を増やすのはいいことだと僕は思っているが、自由化するなら適切な水準で競争が行われることを保障できる制度の枠組みも必要である。

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