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『風の谷のあの人と結婚する方法』 [読書日記]

 

須藤元気選手、2年前のフォトリーディング短期集中講座のオープニングでたまたま席が隣同士になり、ずっとTV中継がある度に応援していた。元々は、2003年末のK1 Dynamite!の入場シーン(映画「メジャーリーグ」をモチーフにしたコスチュームに扮装したやつ)を観て、面白い選手だなと思ってはいたが、実際にお目にかかると、なおのこと親近感が湧いた。

昨年末のDynamite!で、ジャクソン・ペイジ選手に快勝した後、マイクを取って突然の引退を宣言した。須藤選手のことだ、そういうこともあるかなと思ったし、この後どのような活動をしても成功できる人だと思う。

もう2年近くも前のことだからもういいだろうと思い逸話として紹介するが、その時、須藤選手との間でこんなやりとりをしたのを覚えている。                                                                    (Sanchai)「どうして速読(フォトリーディング)を習得したいと考えたのですか?」                                                                                              (須藤)「将来、やりたい事業があるからです。」                                                                     (Sanchai)「どんな事業なんですか?」                                                                                        (須藤)「僕は政治家志望なんです。」

この逸話1つをとっても、彼の意志の強さがわかるような気がする。格闘家というのは単に体力や技術が優れているだけではなく、高い戦略性や駆け引きなどの優れた戦術、それを裏打ちする知識の蓄積とセンスがなければいけないと、自分自身剣道をやっていたことから思うことがある。自分が将来どのような姿でありたいのかというビジョンを先ず描き、それをターゲットとして、いつ頃には何をやっていなければいけないのか、計画性を持って行動できることは、格闘技という一種の「アート(芸術)」の世界だけではなく、広く一般にも適用可能な行動様式だと思う。それを見事にこなしているのが須藤元気という格闘家だった。総合格闘技は政治家という夢を実現するためのステップの1つだったのだろうし、映画出演などタレント的活動もこなして一般人への知名度も上げてきており、政治家になるためのインプットも相当量こなしているように思う。

セミナーをご一緒した際、彼が1日1冊本を読んでいるという話をしていたのを今でも覚えている。それでも物足りないからと受講したのがフォトリーディングの講座だった。また、講座を受講していた3日間について、「練習はどうするのか」と尋ねたところ、特に目標とする試合が控えていないため、この期間は全く練習しないと言っておられた。オンとオフの切り替えが非常にはっきりしている人である。

因みに、フォトリーディングの講座で、何か読みたい本を持って来いと主催者から事前に言われていて、彼が持ってきていた本はこれであった。

ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?

ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?

  • 作者: ウィリアム パウンドストーン
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2003/06
  • メディア: 単行本

                                ▲一応、証拠写真です。オレンジのジャケットが須藤選手。

風の谷のあの人と結婚する方法

風の谷のあの人と結婚する方法

  • 作者: 須藤 元気
  • 出版社/メーカー: ベースボール・マガジン社
  • 発売日: 2006/07/28
  • メディア: 単行本
 さて、本日ご紹介する本は、彼が読んでいた本の話ではなく、彼が昨年エッセイストと一緒に出版した本の話である。既にご紹介してきた須藤元気の思想体系がまとまっている1冊である。本文の中に「風の谷」への言及は全く出てこないが、あとがきで彼がナウシカの台詞「世界を敵と味方だけにわけたら、すべてを焼き尽くすことになっちゃうの」を引用し、ひとりひとりがナウシカに象徴される自然に対する敬意と、愛と慈悲なる形而上的何かにつながるという意味を込めて、本書のタイトルを付けたと述べている。須藤選手といえば、試合に勝つたびに「We are all one.」と書かれた旗を拡げてアピールするので有名である。「すべてはひとつである」「皆はつながっている」というような意味であろうが、本書には一貫して「We are all one.」という彼の思想が述べられているように思う。
エッセイストが「~についてはどう考えるのか」という問いかけを行ない、それに須藤が答えて自らの考えを披露するというもの。いわば2人の往復書簡の形式になっている。全てをここで紹介するわけにもいかないが、須藤語録の中で僕にとっては示唆に富むと思えるものを以下で幾つか紹介してみよう。
  • 「教えることは最大の学びである」「与えれば、得られる」
  • 「新しく有用な知識は、自分と無関係な分野の本から得られることが多い」
  • 「自分をポジティブに変える近道は、プラス思考の人たちの中に身を置くこと」「ネガティブな行いをする人がいたら、その人を反面教師にして、心の中で「教えてくれてありがとう」と言う」「とりまく環境に不満があったら、周りの他人を変えようとせず、まず自分を変えること」
  • 「イン・ラケチ―私はもう一人のあなた自身である」「あなたの周囲の人々は、あなた自身の「あり方」を映し出す鏡」
  • 「自分を好きになるということは、他人に嬉しいことをしてあげられる自分と出会うということ」
  • 「「真の先生」とは、多くの生徒を持つ人のことではなく、多くの師を作り出せる人のことである」
  • 「好きなことをして、あっという間に1日を過ごした人は、本当にあっという間の分しか歳をとっていない。いつまでも若々しくいるには、好きなことをしながら生きること」
  • 「夢が叶った状態をリアルに思い描ければ、そのイメージは現実になる」
  • 「「私が」幸せになるのではなく、「私たちが」幸せになる――いつもそう考えて行動していると、最終的には大きな成功がやってくる」
  • 「小さな達成感を繰り返し味わっているうちに最終目標を達成してしまう、そういうプランを立てれば人は挫折しない」

これらの言葉からは須藤哲学の一端しか紹介できないが、本書を実際に読んでみると、膨大な読書量に裏付されていることが非常によく伝わってくる、マルクスやユングの著作、仏陀の教えからの引用もあれば、「島耕作」「ドラえもん」といった漫画からの引用もある。上で紹介した「イン・ラケチ」は古代マヤの人々の言葉で、その意味するところは、「他人のことを自分だと思って接すれば、相手に不快感を与えないでしょうし、自分の心の内を正直に伝えることもできます」(p.53)と述べている。

ちょっと物足りないなと思うのは、これは「質問送付人」たる森沢明夫氏の質問設定の仕方に大きな問題があると思うのだが、須藤がスピリチュアルな部分での「We are all one.」とは別に、実際に世界中でいくらでもみることができる、紛争や貧困、汚職、環境破壊、感染症、飢餓といった問題に対して、どのような考えを持っているのかについても触れて欲しかった。明示的にはどこにも述べられていないが、「We are all one.」という須藤哲学は、「宇宙船地球号」とか「持続可能な開発」といった、市民社会の有識者の持つ(でも各論になると一般大衆には必ずしも受け入れられているとは思えない)主張と非常に近いものを感じる。であれば、彼のようにインパクトの強い人物が、こうした問題に対して口を開くことは、実際の国際社会をそうした方向に進めるのに大きな役割を果たすであろうと思う。

どこかのぽっと出の新人衆議院議員が、当選後のいろいろな発言で物議をかもしたのは既に一昨年夏頃のことだが、軽薄な人間を政治家にしてしまうよりも、須藤元気のような人間を政界に送り込みたいと思ってしまうのは僕だけではないのではないか。


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ハンディクラフト

スポーツ選手って体力を高めるため常に体力つくりをしている人が多いと思っているがすごい人とが居るのですね。
須藤元気選手を心に留めておきます。
by ハンディクラフト (2007-01-08 21:40) 

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