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へんないきもの [読書日記]

“鉄のよろい”持つ巻き貝、世界で初めて展示

よろいのような硫化鉄のうろこを持つ巻き貝「スケーリーフット」の採取と飼育実験に、日本の調査団が成功した。この貝はインド洋深海底でしか生息が確認されていない。31日から神奈川県の新江ノ島水族館で世界で初めて標本展示される予定。うろこは腹足部を覆い、硬さは人間の歯の倍程度。外敵から身を守っているとみている。海洋研究開発機構を中心とした調査団が今年2月、海底2420メートルから約20個を採取し、船上で1週間以上飼育、観察した。 (読売新聞) - 3月31日


硫化鉄のうろこを持つ巻貝の生態解明に手掛かり(3月30日)                      巻貝の全体写真   うろこ部分の写真
上で紹介した記事が出た時、たまたま『へんないきもの』を読んでいた。その中で、この装甲巻き貝はしっかり紹介されていた。上にその巻貝の全体写真へのリンクを張っておいたが、それと全く同じ姿のイラストを本書の中で見かけていたからである。

 
早川いくお著
『へんないきもの』  
バジリコ、2004年8月

この本は、以前このブログでも紹介した『またまたへんないきもの』が出る前、2004年に発表されていた元祖本である。そして、続編と同様、この本についても、出版元のHPで紹介されているので、そちらもご覧いただきたい。 

多少イラストがデフォルメされているところはあるかもしれないのだが、本書に紹介されている生き物は実在する。例えば、本書のpp.66-67で紹介されている「オオグチボヤ」であるが、実際の写真はこんな感じなのだが、それを大口開けて笑っているようなイラストで紹介しているといった具合だ。       

                                モンテレー湾水族館のHPにはオオグチボヤの動画まで掲載されている。

そして、このイラストを引き立てるのが1つの生き物を1㌻のエッセイ風の軽妙な読み物にまとめている著者のセンスの良さである。またまた「オオグチボヤ」を例に挙げてみよう。


 地面から口が生えて笑っている。実にナンセンスだ。筒井康隆の小説に出てきそうだが、ちゃんと実在するホヤの一種である。

 あからさまに怪しい外見だが、その生態はというとやっぱり怪しい。大口を開けて待ち受け、小エビやプランクトンなどが無邪気に入り込むと、ガバッと口を閉じ、ゴックンと呑み込んでしまうのだ。

(中略)ホヤは我が国では食材でもある。新鮮なホヤとキュウリをあえた酢のものなどは、酒の肴には最適の珍味だ。だがこのオオグチボヤが食えるかどうかはわからない。食えるとしてもこんな口だけの生きものを調理するというのもなかなかどうして気味が悪かろう。まな板で包丁を入れようとしていきなり、

「わははははははははははははははは」

と笑い出されたりしたら、板前もダッシュで逃げるだろう。


仕事でテンパっていて心に余裕がない時、週末などに息抜きとして手に取るには最適の本だ。子供に読み聞かせても結構受けるし、何よりも自分自身が腹の底から大笑いできる。日本テレビが土曜夜に「エンタの神様」を放送しているのは、そうした狙いもあるのかもしれない。お笑い芸人並みに事実を上手く脚色した著者のセンスと、こんな本を出版する覚悟を決めた出版社の英断に心から感謝の意を示したいものだ。    


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