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『実は平家が好き』 [読書日記]

実は平家が好き。―目からウロコの「源平」、その真実 (ダ・ヴィンチ特別編集 (8))

実は平家が好き。―目からウロコの「源平」、その真実 (ダ・ヴィンチ特別編集 (8))

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2005/06
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
滅亡!!壇ノ浦!…でもそないに悪いこと、したやろか?敵将の子である源頼朝・義経兄弟の命まで助け、その彼らに滅ぼされた平家一族vs兄弟で殺しあい滅亡した源氏の後裔たち。海外を見ていた平氏vs土地にこだわった源氏。アーティスト平氏vsソルジャー源氏…勝ち組・源氏政権によって歪められてきた、薄幸にして華麗なる一族「平家」、その真実の姿。

これ、月刊誌「ダ・ヴィンチ」が特別編集した娯楽本である。

僕達が学校で教わる歴史では、平家は悪者で、それを滅ぼした源氏は正義の味方という歴史観を教え込まれた。(同様に、南朝は善で北朝は悪という歴史観もあったと思う。)

でも、歴史上の人物で、徹頭徹尾「悪」を貫いた人というのはそんなに多くないと思う。良かれと思ってやったことが裏目に出て、後世に悪人としての評価が定着してしまうといったことだってあると思う。平清盛なんてその典型だろう。

源義経の敵キャラとしての評価が一般的だと思うが、小中高と学校で歴史を習った後で自分なりに関心を持ってもう一度歴史本を読むと、実は平家と平清盛というのはけっこう国際派で、平家滅亡によって日宋貿易の途が閉ざされ、鎌倉時代の停滞や元寇での混乱の遠因になっていったように思える。

また、少なくとも小中学校の頃の読み物では、義経、義仲、頼朝といった源氏が平家を滅亡に導いていくプロセスを美談として描くことが多いが、実は源氏というのはよ源頼義・義家父子が東北の安部氏を滅ぼした頃から好戦派で、出る杭を徹底的に打ちのめすだけではなく、同族、親兄弟に対しても仕打ちが冷たいことがだんだん理解できるようになってきた。

子供の頃に植え付けられた間違った、或いは偏った歴史認識を、改め修正しより客観的な評価に変えていくプロセスが、社会人になっても僕達には必要ではないかと強く感じる。歴史は教育の中で学ぶだけでは不十分だと思うのだ。

さて、標記の単行本であるが、記述の幾つかについてはちょっとネタ切れ気味なのを露呈してしまっている欠陥はあるものの、歴史は知らないけどタッキーが義経を演じているんだから大河ドラマは見てみようかなんて軽い乗りの読者層にはかなり面白い読み物ではないかと思った。いわゆる大河ドラマ便乗出版物であるが、読みながら、土地中心のストック経済指向の源氏と貿易中心のフロー経済指向の平家という対比の軸が自分なりに形成できたような気がする。

最近、僕の職場に石見の平家落人の子孫らしき嘱託職員がやってきた。「都志見(つしみ)」というのだけど、都落ちの平家の都へのノスタルジアが反映された興味深い苗字である。
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