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日本の出入国管理政策 [外国人労働者]

先日、移民と途上国の開発問題について書いてみたが、その流れで日本の入国管理政策はどうなっているんだろうと思い、ちょっと調べてみた。

1.第三次出入国管理基本計画
●出入国管理及び難民認定法に基づく我が国の5年間の基本方針を定めたもの。現在、第三次計画期間(2005~2009年)に入ったところ。

●第三次計画における主要な課題と日本政府の方針は以下の通り。但し、この方針には外国人の人権への配慮が不十分との指摘もある。
(1)我が国が必要とする外国人の円滑な受入:専門的技術的分野における外国人労働者は積極的な受入、留学生・就学生の適正な受入、研修・技能実習制度の適正化等。
(2)不法滞在者を大幅に縮減し、我が国の治安を回復するための取組:水際対策の強化、在留審査の厳格化、不法滞在者の摘発強化、収容施設の活用と早期送還の実施等。
(3)その他:歓迎すべき外国人の受入円滑化と不法就労を企図する外国人の確実な排除のための体制整備、テロ対策での国際協力、難民認定制度の適正な運用による真の難民の確実な庇護等。
●2004年の正規の入国者数は676万人で過去最高を記録。入出国手続きにおける偽変造文書発見件数は2,688件で過去最高水準に達している。在留外国人数は2003年末現在192万人、総人口の1.5%を占める。不法滞在者数は約24万人と推定されているが、これは1993年をピークに減少傾向にある。不法滞在者の出身国としては、韓国、中国、フィリピン、タイ、マレーシアが上位。

2.外国人労働者受入拡大
選別政策:我が国は、1999年、単純労働者の就労には慎重姿勢を保つ一方、専門的、技術的分野の労働者は積極的に受け入れる方針を閣議決定。現在もこの方針を維持。
対フィリピンEPA:2004年11月に締結されたフィリピンとの経済連携協定(EPA: Economic Partnership Agreement)においても、高齢化社会を背景としたフィリピン人看護師、介護士の受入を、2006年4月を目途に開始することが合意されており、今後もアジア諸国との自由貿易協定(FTA: Free Trade Agreement)協議の過程で同様の検討が行なわれることが予想されている。
人身売買:他方、ILOが5月11日に発表した報告書”A Global Alliance Against Forced Labour”によれば、世界で約1,230万人が国際条約で禁止された「強制労働」に就かされ、うち約240万人が人身売買の被害者と推定されている。日本については、性産業に従事する女性の国際的な人身売買の「主要な目的地の1つ」と指摘。ダンスクラブなどで働くための「芸能ビザ」で合法的に入国し、実際には性的なサービスを強要される例を挙げ、東南アジアや中南米、東欧出身の女性が、人身売買の元締めとなっている犯罪組織の管理下で強制的に性産業に従事させられていると述べている。
出稼ぎ送金:2005年4月のIDB年次総会に先立って行なわれたセミナーにおいて、IDBは、日本に暮らす中南米の出稼ぎ労働者が2004年に本国の親族らに向けて行なった外国送金の総額は、26億6,500万ドル(約2,900億円)と推計され、米国に次ぐ第2位の中南米向け個人送金大国になったことを報告。2003年の日本の中南米に対するODA総額約4億6,390万ドルの約5.7倍に相当する巨大な額(米国の対中南米送金額は320億ドル)。日本に滞在する中南米移民の送金総額が分かったのはこれが初めて。

3.出入国管理及び難民認定法改正(2004年5月)
●不法滞在者の減少策強化、及び「厳しすぎる」と国際的な批判のあった難民認定制度の見直しが柱。
不法滞在者対策:2004年12月施行。不法滞在の罰金を30万円から300万円に引き上げる一方、自主出頭を促すため、一定の要件を満たす場合は身柄拘束なしに出国させ、再入国拒否期間も5年から1年に短縮。
難民認定:2005年5月16日施行。改正のポイントは以下の通り。
(1)難民申請の期間を入国後60日から6ヶ月に延長
(2)審査期間中は強制送還をせず、逃亡する恐れがないなどの要件を満たせば仮滞在を認める
(3)難民に認定され、一定の要件を満たしている人には在留資格を与える
(4)不認定の場合の異議申し立ては第三者が審査する
●米国やカナダが年間1、2万人規模で難民受入を行なっているのに対し、我が国では1982年から2004年末までに申請された3,544件中、難民認定は僅か330人に過ぎず、認定が厳しすぎることが問題の本質であるとの指摘がアムネスティなどからなされている。アフガニスタン人の難民認定は2000年から2004年までに10人前後しかない。

実際に法務省のホームページなどに出ている第三次出入国管理基本計画の原文を見ると、日本に都合の良い労働力は大歓迎で、そうでないのに勝手に入ってくる外国人にはものすごく厳しい文言だなと思う。本国に叩き返せと言わんばかりの口調だ。不法に入ってくる人々にとって、日本は魅力的な国なのかもしれないが、迫害や圧政のために祖国にいられなくなる理由もあった筈だ。簡単に強制送還してその人が本国でどういう目に遭うかもしれないか、もう少し僕たちは考えた方がよい。難民にしてもそうだ。「真の難民」なんて言葉を使っているけれど、難民認定が厳し過ぎないだろうか。

いろいろと考えさせられる内容である。


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Sanchai

ついでに9.11同時多発テロ以降の米国の移民政策についてもご紹介しておこう。

同時多発テロ直前まで、米国政府は、雇用者が必要とする労働者の確保を優先課題として、移民法改正により、外国人への就労ビザ発行や移民ビザ、グリーンカード発行の大幅な期間短縮を進めるなど、外国人労働者を広く受け入れる大勢を整えつつあった。

テロ発生以降、政府にとって警備とテロ防止が最優先課題となった。9.11の結果移民局と移民法の非力が露わになり、移民法の運用のうち、特に国境、空港等での入国管理面やビザ審査が強化された。ビザ審査は全般的に強化されているが、特に学生ビザに関する取締りが厳格化された。またイスラム教18ヶ国の男性のビザ申請には20日間に審査期間が必要とされた。

2004年1月には新入出国管理システム「US-VISITプログラム(Visitor and Immigrant Status Indicator Technology)」が導入され、ビザを使って米国に入出国する全ての国の国民には、米国入国時の指紋のスキャンや顔写真の撮影などが新たに義務付けられた。同システムは2004年9月に適用対象が拡大され、現在は、短期観光客等ビザを免除されている入国者を含む全ての米国入国者が、原則として対象となっている。
by Sanchai (2005-05-29 01:27) 

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