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CAW―国別分析調査(Country Analytic Work) [仕事が好き]

CAW―国別分析調査(Country Analytic Work)

 読者の皆さんは、世銀やADB、Sidaといった援助機関が自分の担当国についてまとめた援助戦略、援助の重点分野が、どのような調査と分析に基づいて行なわれているのか、疑問を思ったことはありませんか?例えば、世界銀行は、3年に1回の頻度でCAS(Country Assistance Strategy)の策定を行なっていますが、CASをまとめてゆく過程で、貧困アセスメント(Poverty Assessment)や公共支出レビュー(PER: Public Expenditure Review)、国別経済メモ(Country Economic Memorandum)、投資環境調査(Investment Climate Survey)といった様々な調査が行なわれます。これらの調査は、総称して「国別診断調査(Country Diagnosis Study)」ないしは「経済セクター調査(ESW: Economic & Sector Work)」と呼ばれ、CAS策定プロセスにおける必須作業とされています。

 JICAの国別事業実施計画の改訂は1年毎に行なわれるので、他機関と同様な分析作業を行なうことは難しいし、他機関が既に行なっている調査を改めてJICAが独自に行なう必要はないでしょう。他機関が行なった調査結果で利用できるものは利用し、各機関の独自の視点で調査が必要なものに特化し、そしてそれらを援助機関相互に共有する――そうした考えに基づき、2002年6月に「Country Analytic Work(CAW)」と呼ばれる国別分析調査のプラットフォームが発足し、27の援助機関が参加しています。

 JICAの場合、国別事業実施計画策定に繋がる国別診断調査として代表的なものは国総研が実施してきた「国別援助研究」です。国総研はCAWのJICA窓口として、2000年以降に実施した国別援助研究を中心に15件の国別分析調査報告書をCAWウェブサイトに掲載しています。国別援助研究は、他機関の国別分析調査と比べてより長期的な開発効果に重点を置いており、JICAが同国で目指す援助戦略への示唆も含め、他機関にとっても貴重な情報となっています。加えて、昨年度は、アルゼンチン緊急支援パッケージとしてJICAが行なった調査の報告書を6件掲載しました。これは、現在CAWに掲載されている同国関連報告書20件のうちちょうど30%を占めるものです。CAW上で調査報告書を他の援助機関と共有することによって、調査のインパクトを拡大することも期待できます。

 JICAが国別分析調査には、国総研の国別援助研究だけではなく、企画・調整部で行なわれている「国別評価」、開発調査やプロジェクト形成調査の中で行なわれている「セクター分析」も含まれます。セクター分析の場合、案件によってはこのような調査自体が全体として1つの国別分析の体裁を持つことも考えられるでしょう。海外技術協力プロジェクトの中にもこうした性格を持つものがきっとあることと思います。皆さんが担当されている国・案件の中で、その調査結果を他の援助機関と共有することで調査のインパクトの拡大が期待できるものがあれば、是非国総研にご相談の上、CAWへの掲載を検討してみて下さい。

 CAWは、他の援助機関が当該被援助国に関して行なった調査を一覧できる便利なサイトです。皆さんも自分の担当国について詳しく知りたい時は、是非CAWを閲覧してみて下さい。URLはhttp://www.countryanalyticwork.net/です。

 6月21日には、ブリュッセルEU本部において、CAW参加27機関による合同ワークショップが開催されます。CAWとしては、単なる情報共有だけではなく、得られた情報をもとに各機関が援助の有効性をいかに高めたかに注目しており、さらには、国別分析調査を複数の機関が共同で実施するような「縁談」成立も期待しています。ワークショップでは様々な事例につき分析が行なわれる予定ですので、他機関のCAW活用状況についても今後皆さんに報告したいと思います。


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